思い出や愛着は、他人には分からない価値。
経済学では、モノの価値は、人によって違うと考えられている。
これを「効用(ユーティリティ)」というが、たくさん持っている人にとっては、大したことがなくても、あまり持っていない人には、とんでもなく大事なものだと認識される。
たとえば仕事の後の一杯目のビールと、酔っぱらった後のビールとでは、値段は同じでも効用や価値は違うはず。
なので自分の価値基準で、他人の価値基準を測ると、思わぬ失敗をすることがある。
とくにお客さんが、思い出や愛着を持っている場合など、致命傷になる。
たとえば子供というのは、いつも同じ格好をしていたりする。
別に貧乏でもないのに、なぜかお気に入りの服を毎日のように着ている。
親がそう言う格好をさせている場合もあるだろうが、子供にとって愛着のあるモノは、絶対なんだろうね。
だからお客さんが何を大事にしているか、それを否定しないことが大事だ。
王侯貴族のような扱いは不要
顧客満足度を向上させるには、お客さんに王侯貴族のような扱いをする必要はない。
お客さんがやりたいこと、しようと思っていることの手助けができればよい。
もちろん、お客さんを王侯貴族のように扱うサービスもあるだろうが、それをするには特別な資質がいる。
簡単に言うと、貴族の生活に熟知しているような執事にならないといけない。
だけどそう言うサービスは、お金もかかるし経験も必要で、一般の庶民対象のビジネスでは全く無理な話だ。
なのでできることとしては、「お客さんをフリーに活動させる」と言うことだけだ。
お客さんの邪魔をしない。
逆に言うと、「こちらから指示は出さない」。
よくある旅館などは、決められた時間に決められたところに行かないと、食事にありつけない。
そして頼みもしないのに、決まった時間が来れば仲居さんがやってきて布団を敷く。
「夕食は●時から、食堂へお越し下さい」「お風呂は●時までにお入り下さい」「朝食は●時から●時までです」言われることは、言葉は丁寧だけれど「指示」だ。
決まったところに決まった時間に行かないと、そのサービスを受けることができない。
そしてそれは、実は旅館側の都合でそうなっているだけで、けっしてお客側都合ではない。
こう言うのは顧客満足度を下げかねない。
それならまだビジネスホテルのように、食事は無しでレストラン、寝具はベッド、朝食はバイキング形式、という風にした方が良い。
お客さんはお客さんでこだわりの生活があるのだから、旅館側の都合でそれを否定してはいけない。