サービス業の賃金が、本当の賃金率!
大企業・大メーカーが生き残るには、高すぎる賃金を引き下げざるを得ない。
経済学では、賃金(率)というのは、労働市場で決まるものとされているが、日本のメーカーの賃金率は、明らかに異常に高い。
労働組合の団体である「連合」が公表しているデータでも、平均を100としたとき、メーカーの従業員の賃金は120以上ある。
その一方で、タクシー運転手だとか、介護などの仕事では、80~85で、メーカーに比べるとざっと3分の2しかない。
なぜこんなに開きがあるかというと、日本のメーカーのほとんどは、輸出で儲けているからだ。
輸出自体では儲かっていなくても、為替や、輸出する分だけたくさんの製品をつくることによる「規模の経済」で利益を上げている。
※規模の経済:同じモノをたくさん作ると1個あたりの製造コストが下がることだからメーカーの従業員は、タクシー運転手や介護などのサービス業の、5割り増し近い賃金を受け取ってこられたわけである。
だから輸出が大幅に減ると、この5割り増しの賃金を支払うための原資がなくなってしまう。
要するに、そんなバカ高い賃金なんて、払えなくなるわけである。
サービス業の賃金が、本当の日本の賃金
一方、サービス業の賃金は、もともと低い。
なぜかというと、なかなか大量生産できないたぐいのモノだからである。
ウィキペディアによると、サービス業の特性として、次のことがあげられている。
同時性売り買いした後にモノが残らず、生産と同時に消費されていく。
不可分性生産と消費を切り離すことは不可能である。
不均質性品質は一定ではない。
非有形性触ることができない、はっきりとした形がないため、商品を購入前に見たり試したりすることが不可能。
消滅性形のないものゆえ、在庫にすることが不可能である。
この説明ではわかりにくいが、サービス業というのは、簡単に言うと、散髪屋さんである。
散髪屋さんというのは、お客さんがお店に来ないと仕事のチャンスがない。
お客さんが来て、「散髪してください」と言わないと、サービスしようがない。
これがつまり「同時性」「付可分性」と言うヤツである。
また、散髪屋さんは、何かモノ(商品)を売ってくれるところではなく、髪の毛を切ってくれるだけのところである。
理容師さんの腕前によってできあがりは様々だし、品質は一定ではない。
どういう結果になるかは、できあがらないと分からない。
また、店が暇だからと言って、あらかじめお客さんの髪の毛をたくさん切っておくこともできない。
こういう仕事の場合、お店の収入は、その地域に住んでいる住人の収入で決まってくる。
その地域内で生産され、消費されるだけだから、輸出も輸入も関係ないのである。
そうなると、メーカーのように、輸出で稼いだり、規模の経済(スケールメリット)で稼ぐと言うことは、サービス業ではなかなかできないから、賃金率は当然メーカーより低くなってしまう。
世界の工場としての日本の役割は、残念ながらもう終わってしまったから、これからはサービス業の賃金水準が当然の賃金水準になるはずだ。